陸の孤島に描かれたキャンドル最古の壁画

カテゴリ History of Candle

キャンドル(ロウソク)Chapter 3

キャンドルが古代から使われていた痕跡として、燭台の話が2回続きましたが、現在のキャンドルに近い形が登場するのはそれからさらに1000年ほど待たなければなりません。

ローマから南へ約100kmのところにオルヴィエートという都市があります。ここにゴリニー1世という王の墳墓があり、その壁画に現在と同じような形のキャンドルが描かれています。


宴の模様が描かれた壁画で、ワインの入った壺らしきもの、給仕をする男たち、それらと並んで部屋の隅に一対の燭台があり、それぞれ3本ずつキャンドルが灯っています。この壁画は紀元前3~4世紀の作で、おそらく実際のキャンドルの形を描いた最古のものといわれています。

といっても、オルヴィエートはあまり馴染みのない町。なぜキャンドルの描かれた最古の壁画があるのかイメージが湧きませんね。では、少し町をご案内いたしましょう。

歴史は古く、ローマ時代以前のエトルリア時代までさかのぼり、紀元前7~8世紀頃といわれています。サッカーの中田選手が所属していたペルージャと同じウンブリア州にあり、白ワインの産地としても有名。

しかし、なにより特徴的なのは地形です。平野部にそこだけ突出したような凝灰岩の丘。その丘の周囲は断崖で人を寄せつけない険しさがあります。オルヴィエートの町はこの、陸の孤島を思わせる丘の上にあるのです。

キャンドル(ロウソク)町に入るには麓にあるケーブルカーで行くのが便利。町の中心部に続くカブール通りは中世の雰囲気をそのまま今に伝えています。途中、13世紀頃より続く伝統的なオルヴィエート陶器の店を覗くのも楽しいでしょう。エトルリア陶器技法で焼かれた品々はイタリアらしい鮮やかな色彩があふれています。

この町の観光ハイライトのひとつはドゥオモ(教会)。1290年の着工から、およそ3世紀近くにわたって建造されたイタリア・ゴシックを代表する教会です。

そしてもうひとつが地下都市。凝灰岩は柔らかいけれど丈夫という特質を持っています。地下に入れば気温は低く、しかも一定。エトルリアの時代から3000年にわたって地下都市は掘り続けられ、そこには鳩の飼育穴が開いた部屋とかオリーブオイルを圧搾していた部屋、貯水部屋など、町の人たちの暮らしに必要な場所が作られています。

現在はこの一部が公開されており、地下都市をめぐる冒険はガイドにしたがって約1時間。ちょっとしたインディ・ジョーンズの世界を味わえるでしょう。

さて、なぜオルヴィエートにキャンドルが描かれた最古の壁画があるか、もうおわかりですね。そう、地下都市にキャンドルは欠かせない存在だったのでしょう。エトルリアは現在のウンブリア、トスカーナ、ラツィオ3州にわたって独自の文化を築きました。

その中心的な都市がオルヴィエートで、おおがかりな宗教などの儀式もここで行われていました。エトルリア人はギリシア人との交流も盛んだったことから、キャンドルがクレタ島からギリシアに渡り、そしてここオルヴィエートに届いたことも想像がつきます。最古の壁画は地下都市で繰り広げられた宴を描いたのかもしれませんね。

ちなみに同じウンブリア州にあるグッビオという町では『ロウソク競争』という祭りがあるそうです。なんでも御輿の上に巨大なキャンドルが備えてあり、男たちがその御輿をかついで全速力で町を駆けめぐり、最後は山の上の教会に駆け込むという壮大なもの。

キャンドル・フリークにとってウンブリア州はなかなか魅力的なところのようです。


キャンドルの不思議なチカラ。